ダイビングの世界

日本の海は四季折々~春夏秋冬の海を知ろう~

ダイビングは世界各国の海を存分に楽しむ事が出来るマリンアクティビティです。その中でも今回は日本の海について紹介していきます。日本が他国と多くと大きく違うのは海に四季(春夏秋冬)が存在する事です。日本以外の国では海に四季が存在せず、ほとんどは「雨季、乾季」の区別しか存在しません。日本は四季が存在する事により、同じダイビングポイントでも季節ごとに見所も変わってくる為、常に新鮮さを味わうことができるのです。日本の中でも伊豆の海をこよなく愛する人はとても多いと言われています。伊豆はダイビングポイント自体多い事でも有名ですが、黒潮の影響を大きく受ける海という理由も掲げられています!黒潮がどんな影響を及ぼしているのか皆様はご存知でしょうか?黒潮とはダイバーにとって素晴らしい海流なのです。日本海流と呼ばれる海の中の大きな水の流れのことで、暖かい水を運ぶ「暖流」の一種です。なぜ「黒潮」という名前なのかと言うと、海の中が黒くなるのでは無いですが水面付近は青黒っぽい色をしているという事から由来となっているのです!黒潮についてはまた後程季節ごとの説明の時にお話ししていきます!

北は北海道、南は沖縄に渡るまで全く違う環境でダイビングが出来る日本の海。北へ3時間ほど飛行機に乗ってしまえば、流氷下でクリオネなどを観察することができる北海道でのダイビングが出来、南へ3時間ほど飛行機に乗ればカラフルな熱帯魚やサンゴに囲まれる沖縄でのダイビングが出来てしまうのです。1つの国で様々な種類のダイビングが可能な環境がある日本は海外のダイバーからもとても人気なのです。しかし、日本のダイバーはダイビングを始めた時にこんな素敵な事を知っている人はごく僅か…。多くのダイバーは「ダイビング=夏」だけというイメージを持っています。秋冬はダイビングから遠ざかってしまう方もいるのです。この記事を読んだ方には是非今後は「ダイビング=夏」から「ダイビング=オールシーズン」に変えて欲しいなと思います!

それではそれぞれの季節の特色について知っていきましょう!今回は本州(千葉・伊豆)をメインにご紹介していきます。

ダイビングのシーズナリティ

春の海(3月-7月)

春は魚たちが増え始める時期と言われています!その為春の海では水中生物の求愛や産卵シーンを観察できる機会が増えます。これから大きく成長をしようとしている魚たちの赤ちゃんも観察できます。3月から魚の大好物でもある「プランクトン」が増えていきます。プランクトンは水中に浮遊物となり透明度を低下させる原因となります。この現象を「春濁り」と言います!冬の間に海の底と表面の水の温度差がなくなることで栄養の多い下層の水が上層と混ざり合い、それが気温の上昇と共にプランクトンの大量増殖を呼ぶと言われています。海の中のプランクトンはこの時期に増え、海の中の栄養分が高い状態になります。その反面ダイバー視点からすると、伊豆の辺りは透明度が3mくらいまで落ちることがあります。勿論春濁りの時期がずっと3mと言う訳ではありませんが、水中ライトなど常備しておくと水中をお楽しみ頂けると思います!透明度がそこまで良くないとは言えプランクトンの影響で海自体には沢山の生物が存在します!春濁りが2週間くらいで終わった後の4月中旬以降は、伊豆周辺では黒潮の影響の度合いにより水温や透明度が変わります。春濁りほど酷くはならないですが、透明度が下がる日もあったり、逆に冬や真夏のようにスコーンと抜ける日もあったりと様々な水中を楽しめる時期となります♪

夏の海(8月-10月)

伊豆の夏の海は8月の後半から9月にかけて始まります。こんなに遅いの?夏がそろそろ終わる時期なのでは?と思われる方もいらっしゃると思います。海水温の上昇は6月から始まるのですが陸の気温の上昇に対して、海の中の海水温の上昇は約1ヶ月ほど遅れるのです。その為、外の気温が上がる6月末から7月は伊豆の海の中はまだ陸上で言う5月頃となります。海水温の上昇がピークになるのは8月の後半から9月となり、伊豆の海の夏が始まります。8月末ごろから快適に暖かい海を潜ることができます!また、季節回遊魚と言われる南の島から暖かい黒潮に乗って伊豆にやって来るカラフルなお魚もこの時期から見られるようになってきます。外の気温がまだ暖かい10月下旬までは伊豆の海の夏と言われています!夏の時期の伊豆の魚たちはとても元気で、多くの魚を見れます。カラフルなキンギョハナダイの群れ、イサキやタカベ、シイラ、時々イルカやカメも見れます!伊豆の海も南国の海に負けていません♪伊豆の海の中の夏は8月から始まりますが、実質的には外の気温が温かい7月から10月の末までは、海の中も温かいので、非常に快適なダイビングが楽しめます。

秋の海(10月下旬-12月下旬)

秋の海はなんと一番魚影が濃い!夏に育てられた魚が成長を遂げ、大型回遊魚も多かったりとお魚フィーバーの時期なのです!夏より秋の方がさらに透明度も良くなり、季節来遊魚も夏以上に増えます。水温は高く、生物の種類が豊富で、沖縄でも本州の海でもベストシーズンと言われる時期に突入するのです!外気は次第に気温が下がっていく時期ですが、まだ海の中が温かいです。その他にも講習などのデビューにはお勧めの時期です。講習で海に行く際、夏場は旅行や海水浴に行く観光客で道路が渋滞することも多いのですが、秋になれば一段落します。また、海でも夏場は講習生が多く、海の中はもちろん、器材洗い場やシャワー室なども混雑し、快適に講習が受けられないこともあるのです。秋以降のシーズンになると混雑も解消され、のびのびと講習を受けることができます!季節回遊魚もまだいる時期ではありますが、秋のダイビングは生物の入れ替わり時期とも言われています。冬が狙い目で人気の海の宝石とも言われる「ウミウシ」の姿も見え始めるのがこの時期です!ウミウシ好きのダイバーにとっては特にベストシーズンになっていくのです!

冬の海(1月-3月)

冬はドライスーツの時期となります。12月の中旬を過ぎる頃には伊豆の海の水温は下がり、外気もぐっと下がり、年末にかけて水温も低くなります。その反面、1年の中で伊豆の海が最も綺麗なのは実はこの冬の季節なのです!この時期になると水温が低くなる為、夏から秋にかけているプランクトンなどの浮遊物が一気になくなります。その影響で冬場の海は安定した透明度が期待できるのです!伊豆の海でもスコーーンと抜けた透明度の高い沖縄のような海を楽しむことが出来る時期でもあります。冬には水温が下がる事で冷たい水を好む水中の宝石とも呼ばれているウミウシ類が多く観察出来ます。海の宝石とも言われるウミウシですが知れば知るほどハマってしまう方が多数!そんなウミウシについて詳しく書かれた記事を貼っておきますね♪

冬が旬のウミウシについて!

夏や秋に見えていた生物とはガラッと変わり、やや深くて冷たい水に生息するヒラメやアンコウなどの珍しい魚達が見れるようになってきます。また、冬場はイベントだらけ!水中にクリスマスツリーが飾られたり、お正月には水中御籤があったりとイベントチックな装飾も圧巻の透明度の中堪能する事が出来るのです!

黒潮とは何なのか?

黒潮とはダイバーにとって素晴らしい海流と言われますが一体どんな存在なのでしょうか。日本海流と呼ばれる海の中の大きな水の流れのことで、暖かい水を運ぶ「暖流」の一種です。なぜ「黒潮」という名前なのかと言うと、海の中が黒くなるのでは無いですが水面付近は青黒っぽい色をしているという事から由来となっているのです!黒潮はただの暖かい水の流れというだけではなく、壮大な海の川のような物なので深く、塩分濃度も高い。そして流れも時には早い為、海水の上下方向での循環が起こりにくいとされています。この現象により、海の表面付近で太陽の光などで栄養分がなくなっていくのです。栄養分が無いとプランクトンは発生せず水の透明度が上がっていく、と言った仕組みになっています。水の透明度が上がると青い色を優先的に吸収するので、海が深い青色、つまり紺色に見えるのです。ですから透明度が高く、青い海になります。冒頭でもお話をした通り海の川と言われるほど大きな海流なので青くなる範囲も広いのです!

黒潮の大事な役割とは?

黒潮は陸上では温暖な気候をもたらし、水中では南からの暖かい海水を運んでくれます。栄養素が少ない海流ですので、生物にとっては生きにくい環境ですが、巡り巡って、伊豆のダイビングの環境を作り出しています。もう1つの重要な役割は、南の海から、カラフルな生物を伊豆付近まで連れてくる運搬の役目を果たしていることです。非常に大きくて速い海流は、沖縄などの南の島から亜熱帯、熱帯の魚たちの卵や稚魚を運んできます。そして、それが、日本の太平洋沿岸に流れ着いてくるのです!伊豆ダイバーにはとても嬉しいカラフルなお魚。都心から少しの距離で沖縄にいるようなお魚を堪能できるのです!ちなみに!!南方の暖かい海水を運んでくる黒潮がもっとも本州に接近するのは秋なのです。その為、日本の太平洋沿岸部では実は秋が一番海水温が高く、透明度も増すのです!この黒潮があるからこそ伊豆の海にも四季があり、様々な種類の魚や地形・色・違った雰囲気を楽しむことが出来ているのです。黒潮という自然の恵みを受けて、伊豆から始まった日本のダイビング。黒潮の影響を受けた海を楽しみたいならば秋先から冬前までに!


まとめ

ここまで伊豆のダイビングにおいた四季「春夏秋冬」をご紹介してきました!大まかに分けて4つの季節に分かれる伊豆ですが、水中のコンディションは日によってがらりと変わります。いつ黒潮が入り透明度が良くなるのか、どの時期にお魚が増えるのか。自分の好きな生物が出来始めるとその時期が好きになったり、○○を見に行きたいからこの時期に潜らないと!と言ったダイビングスタイルの基準もできてくるはずです。伊豆の海はこの4つの季節それぞれにいい所があり1つの国で様々なダイビングスタイルを経験できる事がダイバーにとっては当たり前ではない良さなのです。海外からダイバーさんが日本にやって来るほど「生物・地形・透明度」が揃う伊豆でみなさんもダイビングを楽しんで頂ければと思います!

関連コラム