AIDA公認による競技会(大会/記録会)でのルールは”AIDA 競技規則”に準じて行われています。選手の競技(以下:パフォーマンス)は最終的に公式審判(以下:ジャッジ)が下す判定によってその記録(時間、距離、深度)が確定します。各記録はポイントに変換され、ペナルティがある場合は減点されます。

判定はジャッジが下す3枚のカード

ホワイトカード

成功!認定!パーフェクト!
ペナルティ点なく結果が記録として残る。

イエローカード

おしい!
何らかのペナルティ要因があり、結果は減点される。

レッドカード

失格!
記録は残らず、結果は0点となる。

記録の大小に関わらず、選手のパフォーマンスがパーフェクトに終えられたことが証明される「ホワイトカード」が出た瞬間は、ここぞと歓声、喜びに包まれる。
常に緊張感に包まれ静まり返っていた競技会場も、「ホワイトカード」が挙げられた時が一番の盛り上がりどころ!

海洋種目
CWT/コンスタントウエイト・アプネア・ウィズフィン
CNF/コンスタントウエイト・アプネア・ウィズアウトフィン
CWTB/コンスタントウエイト・アプネア・ウィズバイフィン
FIM/フリー・イマージョン

プール種目
STA/ スタティック・アプネア
DYN/ダイナミック・アプネア・ウィズフィン
DNF/ダイナミック・アプネア・ウィズアウトフィン
DYNB/ダイナミック・アプネア・ウィズバイフィン

競技の進行

大会前日~競技スタート前 - 申告 -

選手は各種目で目標とする距離や時間をあらかじめ「申告」する。(ほとんどの場合、当日または前日に)
申告の幅に規定は無く自由だが、もしも結果が申告に及ばなかった場合は、「申告未達」となりペナルティが課せられる。(判定はイエローカード)

プール種目・・・申告以上のパフォーマンスが必須。

プール種目では結果が申告を上回る分には問題ないため、スタティック・アプネアの記録が6分を超えるような選手でも「1秒」という申告を出すことも珍しくない。結果の判定には影響しないが、同じ記録を成功させた選手が複数いた場合のみ、申告と結果の差が少ない選手のほうがより上位になる。また、競技会によっては申告する時間や距離の短い順に競技順が決まる場合もあり、理想の競技順を想定しながら申告する場合もある。
例 )
A選手 (記録6分20秒  / 申告3分01秒 ) →1位
B選手 (記録6分20秒  / 申告3分00秒 ) →2位

また、競技ポイントが同じだった場合にも申告が影響する
例 )
A選手 (申告2分00秒、結果2分00秒 ポイント:24-0=24 ) →1位
B選手 (申告5分00秒、結果3分30秒 ポイント:42-18=24 ) →2位

競技スタート前 - チェックイン 60分前 -

主催者が指定した場所に競技開始の60分前にチェックインをしないと失格となる。また、指定の場所以外で待機していた場合にも失格となる。

競技スタート前 - ウォーミングアップ 45分前から -

競技スタート時間(オフィシャルトップ)の45分前からウォーミングアップエリアへ入水することができる。それまでは選手控え室や待機エリアでストレッチやヨガ、瞑想などをして心拍数をあげないようリラックスする事に努めている。また、他の選手のサポートを行うため以外の目的で入水すると失格になる。

競技開始  - オフィシャルトップ -

競技会は終始「オフィシャル時計」の時間によって管理され、各選手には競技スタート時間となる「オフィシャルトップタイム(以下、オフィシャルトップ)」が決められている。アナウンサーが読み上げる「オフィシャルカウント」はオフィシャルトップの2分前から始まる。

オフィシャルカウント → 「2分前、1分30秒前、1分前、30秒前、20秒前、10秒前、5、4、3、2、1、オフィシャルトップ、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、25、26、27、28、29、スタートキャンセル」

プール種目・・・オフィシャルトップから10秒以内に競技をスタートすること。
10秒をオーバーした場合はペナルティの対象となり、30秒経過でスタートキャンセルとなる。また、オフィシャルトップよりも前に入水することもペナルティの対象となる。

競技中 - ベスト・パフォーマンスを目指す -

大会でより上位を目指すために頑張る事も大切だが、頑張り過ぎると酸欠による痙攣や失神などで失格になってしまうことも少なくない。種目を問わずフリーダイビングで何より大切なのは、フリーダイビングそのものを楽しむことと、そのためによりリラックスした気持ちで競技に臨むことである。頑張って苦しいのを我慢するのではなく、いまのコンディションでいかにクリアに最高のパフォーマンスができるかが見所でもある。

競技中 - サポート / コーチ -

スタティック・アプネアの競技中や競技開始前に選手に声をかけている人は「サポート」や「コーチ」と呼ばれ、パフォーマンス結果に直接の関係はないが、スタティック・アプネア競技中の選手に経過時間を知らせたり、浮上後にサーフェス・プロトコルがうまく出来ない場合に声で誘導したりと、その影響力は大きい。ジャッジの判定が出る前に選手に触れたり、スタティック・アプネア以外で競技中の選手に触れるとその選手は失格となる。サポートは1名の選手につき1名のみ認められる。

競技終了 - サーフェス・プロトコルの完了 -

どの種目も、浮上後に意識の明瞭さを示すための一連の動作、「浮上後確認動作(サーフェスプロトコル 以下「SP」)」を行う。この動作を正確に行うことが最終的なジャッジ判定の決め手となる。頑張りすぎたパフォーマンスは酸欠によりこの動作が正確に行えないという結果を招く。判定が出るまでの30秒間、水面上に口と鼻を保持する必要がある。

サーフェス・プロトコル(SP)の手順とルール

  1. 浮上後、気道(口と鼻)を水面上に保持する。
  2. 顔面の装備(マスク、ノーズクリップ、ゴーグルなど)をすべて外す。
  3. ジャッジを見て、片手で親指とそれ以外の指を繋いだOKサインを作り、1回示す。
  4. 「I’m OK」 または、「I am OK」としっかりと1回だけ発声する。
  • 1~4は順番通りに、浮上後15秒以内で完了すること。
  • 1~4までの間にその他の余計な言動(エキストラサイン)は一切不可。
  • 1~4の手順が終了した後もジャッジの判定が出るまでは気道を水面上に保持しなければならず、他者との接触は認められない。
  • エキストラサイン
    例)OKサイン以外のサイン、ついていない装備を外そうとする、別の言葉を発するetc.
  • エキストラサインの例外
    例)水を拭う動作、フードやキャップを取る、咳やくしゃみなどの生理現象、笑うetc.

競技終了  - プロテスト (異議申し立て) -

ジャッジによる競技判定が、選手本人または第三者から見て納得出来ない結果であった場合、競技終了直後15分以内、または当日の競技結果発表から15分以内に、同者はその結果に異議を申し立てることができる。運営スタッフが録画している公式の競技映像は、その主張が認められるか否かの重要証拠として用いられ、審判団の多数決によって再判定が決まる。プロテストの結果、判定がレッドカードからホワイトカードに覆ったり、またはその逆もある。 プロテストの際は 50 ユーロまたは同額の現地通貨を支払うが、審判団が競技者の正当性を認めた場合は返却される。(日本の場合は5,000円支払う)

これは失格! ― レッドカード判定 ―

選手の身体に触れている! 選手が競技開始後(気道が入水した時点)はジャッジの判定が出るまでは誰も選手の身体に触れていてはいけない。(スタティック・アプネアの競技中のサポートは例外)
—全種目共通—
オフィシャルトップタイムオーバー(30秒以上) オフィシャルトップから30秒以上経過しても選手がスタートしない場合は失格となる。
—全種目共通—
再び口(気道)が水没してしまった! 酸欠状態によるブラックアウト(BO)や、ロストモーターコントロール(LMC)により水没してしまう場合はもちろん、意図せず口、または鼻が水に触れてしまった場合もNG!しっかりと意識して顔を水面上にキープしていなければならない。
—全種目共通—
SPが正確にできない SPは全ての動作を完璧に満たさなければ失格となる。例えば、15秒以上かかってしまう、OKサインの動作を2回やってしまう、「I’m OK」がしっかり発声できていない(聞き取りにくい)、手が震えてマスクがしっかり取れない、 「I’m OK」 以外の発声、ジャッジの方を向いていない・・・など。意識がはっきりしていても、手順を間違うと意識不明瞭と取られるため失格となる。
—全種目共通—
ターン時 ターン時に身体と壁が1m以上離れていた場合は失格となる。
—DYN / DNF / DYNB—
選手が身体の一部が水面に出たままレーンを泳ぎ切った場合 選手の身体の一部が水面に出たままレーンを泳ぎ切った場合、水面に出たまま全競技を終えた場合は失格となる
—DYN / DNF / DYNB—
競技中に水面でアームリカバリー 競技中に水面でアームリカバリー(クロールのような動作)を行う場合は失格となる
—DYN / DNF / DYNB—
スタートラインを越えての入水 スタート時は壁から1,5m以内に競技をスタート(気道入水)しなければならない。大会によってスタートラインが引かれている場合とない場合がある。
—DYN / DNF / DYNB—
フラッターキック以外のキック DYNBでは、フラッターキック(バタ足)以外のキックを1度でも行った場合は失格となる。
—DYNB—

これは減点! ― イエローカード判定 ―

オフィシャルトップ以前のスタート(アーリースタート) オフィシャルトップより早く競技を開始した場合、5 秒につき 1 ポイントのペナルティが適用される。
※オフィシャルトップ前に入水したとしても、同じくオフィシャルトップ前に気道を再び水面に戻せばスタートとはみなされない。
—全種目共通—
オフィシャルトップ後のスタート(レイトスタート) オフィシャルトップ後、10秒以上経過してから競技をスタートした場合は、5秒につき1ポイントのペナルティが適用される。
—全種目共通—
スタート、ターン時 スタート及びターン時に身体のいかなる部分も壁にタッチしなかった場合は1回につき5ポイントのペナルティが適用される。
—DYN / DNF / DYNB—
浮上時に水底や壁を蹴る、押す 気道が水面に出る前にプールの水底を蹴って浮上すること、または手を使い床や壁を押して推進力にすることは1回につき5ポイントのペナルティが適用される。(スタート及びターン時に壁を蹴る事は含まれない。)浮上の為に壁を触ったり、コースロープを引っ張るのは含まれない。
—DYN / DNF / DYNB—

申告未達(ダイナミック種目)
結果が申告距離を下回った場合、1m につき 0.5 ポイントのペナルティが適用される。(小数点2桁以下繰り上げ)

例: 申告(AP)=100m、結果(RP)=89m
申告と結果の差=11m
ペナルティ:11×0.5=5.5 ポイント
最終ポイント:44.5(89m)-5.5(11m)=39 ポイント

—DYN / DNF / DYNB—
申告未達(スタティック) 結果が申告時間を下回った場合、1秒につき 0.2ポイントのペナルティが適用される。(小数点2桁以下繰り上げ)

例: 申告(AP)=5分 35秒、結果(RP)= 5分 4 秒
申告と結果の差= 31 秒
ペナルティ= 6.2 ポイント
最終ポイント= 60.8(5分4 秒) - 6.2= 54.6 ポイント

—STA—